マクベイ艦長は独り漂う救命いかだに乗って真っ暗の中で一人の船員を見つけたが、彼はすでに息絶えていた。
朝になった漂流1日目、乗員約1200名のうちの約900名くらいが、数キロ範囲で漂っていた。
そんな中でマクベイ艦長は機関長のマクウォーターを見つけたが、彼の右足は切断されてたのだ。
バラバラに漂っている乗員たちには、脅威となるサメの姿が常に目に写っていた。
7月31日 漂流2日目 約1200名の乗員のうち、すでにこの時点で生存者約700名になっていた。
漂流1日目でサメに襲われてしまった者も少なからずいたが、艦の爆発で負傷を負った多くの者は、海へ放り出された時にはすでに体力を奪われてしまったのだ。
その夜、マクベイ艦長は機関長のマクウォーターを看取った。
8月1日 漂流3日目を迎え、この時点で生存者は約500名となっていた・・
新兵のブライアンとダントニオは生きていたが、昨晩サメに足を噛まれたダントニオには血の気がなくなっていた。
「ブライアン、クララのことを頼む・・」と呟いたダントニオはやがて目を閉じたままになり、ブライアンは周りに人が見当たらないのを確認すると、思い切り泣き叫ぶのだった。
8月2日漂流4日目 生存者約350名となった。すでに食料も水もなく希望もなくただ漂っている。
一人また一人と、腹が減ってきたサメたちにとって、ここはまるで餌場みたいになっていた。
陸地よりもずっと広大な海の中、我々が見つかる方法は奇跡に近かった。
「将来のある若者たちが、過酷なこの状況に精神も崩れていき、屈服していったのだ・・」
そしてその奇跡は起きる・・
たまたま潜水艦攻撃用の偵察機が周辺に漂うオイルを発見。爆雷投下しようと低空で巡回すると、沢山の漂う乗員たちを見つけるのである!
「爆雷投下中止!何人もの漂流者を発見した!至急調査してください!」
その2時間後、近くの基地から飛行艇がやってきて周囲を確認し着水。
「ブライアン通信兵です!沈没した重巡洋艦インディアナポリスの・・」
「それから間もなく救助艦が周囲に次々と集まって来たが、どういうわけか救助されるまでのこの間がとても長く感じたのだ。」と、艦長。
グアム島、海軍病院へ運ばれた兵員のうち、生存者はわずか317名だった。
マクベイ艦長は特に大きなケガも無く、入院している兵員たちを見舞わった。
「運命の悪戯か、艦長の私が生き残っているなんて・・」
多くの若者の犠牲者を出してしまったことは、生き残った艦長に重くのしかかることになること、艦長は覚悟するのである。
1945年8月、日本との戦争が終結
上層部は極秘任務だったインディアナポリスが沈没し大きな犠牲者が出たことを内密にしておきたかったが、この責任を負う者を出すことで収束させようしたのだった。
インディアナポリスの沈没した責任を、適切な航行をしてなかったマクベイ艦長のミスとして裁判を行うのである。
護衛艦なしのただ一隻では潜水艦には対処できないためジグザグ航行をするべきだったことと、沈没前ただちに総員退去指示を行ったのかどうかが取り上げられた。
そしてこの裁判に証人として呼ばれたのは、日本海軍潜水艦イ-58の艦長だった橋本だった。
質問に対し、橋本はこう答えた。
「あの近距離では、たとえジグザグ航行をしていても6本の魚雷からは逃げられなかったでしょう」
裁判の後、マクベイ艦長は橋本を呼びとめて話しかける。
「護衛なしで無防備の貴艦は逃げるすべはなかったのです。任務で攻撃したが、人としては良いことではなかったと思っております・・」と橋本が言うと、
「あの積み荷が何だったか見当はついていました。任務だったが、人として良いことをしたとは全く思っていません・・」とマクベイ艦長も答えた。
ダントニオが懸命に探していた指輪を同僚から受け取ったブライアンは、それをすでに妊娠しているクララに届けた。そして、ブライアン自身が用意した指輪を彼女に受け取ってもらえたのだった。
「今回 日本との戦争には勝利したが、本当の勝利とは世界から戦争がなくなることだと思う・・」
戦死者を追悼する式典で、ブライアンはダントニオの写真を壁に掛けて思った。
時は過ぎゆく、マクベイ艦長は愛する妻に先立たれてしまったが、いまだに苦情の電話は終わっていなかった。そしてそののち、自らも後を追ったのである。
—完—
戦後、退役した橋本元艦長は神職となり、1999年にマクベイ艦長の名誉回復運動に協力した後の翌年に他界。間もなく、当時のクリントン大統領にてマクベイ艦長の名誉回復がなされたのである。
いや~!こんな実話物語があったとは知らなかったですね~! 本当にただの歴史上の一つの中にも、それはそれは深い物語があるのですね・・
それにしても この映画を観終わった後で不思議に思ったのは、大きな海で漂流している中でサメがウロウロしているシーンはどうやって撮影したのかでした。
あのサメたちが人のすぐ横を泳ぎ回っていましたが、後でプロダクションノートを見てみると水中でも本物のサメの様に泳げるロボットを使ってたみたいです!(それにしても良くできてましたね~)
残念ながら(ニコラス・ケイジが主演した映画作品の中では)興行収入がとても低かったようなのです。戦後に生まれた現代の人々にとっては関心は薄く、また当時に生きていた「生き証人である高齢者」も今では少なくなっているからなのでしょうかね・・
人類史上初めて日本に原子爆弾が使われましたが、もしそれを届ける前に日本海軍の潜水艦で阻止できていたなら、広島と長崎の原爆被害者は出なかったかもしれません。
しかし、日本にとってあの戦争は遅かれ早かれ負けるしかなかったでしょう。
縄文時代、平安時代・鎌倉時代の弓、刀と槍、戦国時代の鉄砲、江戸時代の大砲、昭和時代の戦車戦艦と原爆、平成、令和時代のGPSミサイルやドローン兵器、と人間の兵器は進化し続けました。
どんなに技術進歩しても、戦争には必ず犠牲者が出てしまうものです。人は一人では争いごとはできません。そして一人では生きていけません。しかし大勢になると組織ができ規律もできていきますが、異なったそれぞれの考えが分断を発生させていき、そして権力争いが起こっていきます。
この繰り返しで、永遠に争いごとは無くならないのでしょう。マクベイ艦長の呟いた言葉通りに・・
「戦争はなくならない・・人類が存在しているかぎり・・」