「チャンス」 Being there
1979年 アメリカ 作品
先日、ずっと探していた名作が押入れの奥からやっと見つかりました!40年以上も昔の作品ですが、人生(運命)の不思議な流れを感じさせてくれるのです。
この人の純粋さは、後に製作された映画「フォレストガンプ」を思い出します。僅かにも曲がった心の無い究極の純粋心は、全ての人間に持ってもらいたいほどです・・
なんの学識も無いただの庭師が、その純粋な心によって周囲に大きく影響を及ぼし、果ては大統領候補にまでなってしまうという物語になっています。
この人生(世)は全ての流れが絡み合った、それはそれは不思議な運命(シナリオ)となっていると思います。
もろもろの感想は一番最後に記述したいと思いますが、本当に心が暖かくなる物語なので全ての人に是非とも最後まで観てもらいたい映画作品です!
*CAST*
チャンス ピーターセラーズ
イヴ シャリーマックレーン
ランド氏 メルヴィンダグラス
米国大統領 ジャックウォーデン
ロバート医師 リチャードダイサート
ルイーズ ルースアタウェイ
トーマス弁護士 デイビッドクレノン
*STAFF*
監督 ハルアシュビー
原作脚本 ジャージコジンスキー
製作 アンドリューブラウンズバーグ
製作総指揮 ジャックシュワルツマン
音楽 ジェニーマンデル
それでは早速、この懐かしい作品を古いパンフレットを見ながら想い出してみましょう・・
【物語 あらすじ】
朝、目が覚めるとテレビを観ることから始まるのが日課の庭師・チャンス。子供の時からこの家に暮らしてきたチャンスは、大人になってからは庭の手入れ係になっていた。
ある朝、昔からのメイドであるルイーズが部屋へ入ってきて、ご主人様がベッドで亡くなっていることを知らせてきた。
いつもと変わらず庭の手入れをしていると、ルイーズが身支度をしてお別れを伝えに来て言うのだった。
「チャンス、いい人を見つけて一緒になりなさいね・・」
チャンスは子供の頃から何も教育も受けずにずっとこの家で暮らしてきたので、誰もいなくなった家でもその意味が分からずにテレビを観るのだった。
間もなくして、この家の整理のために弁護士2人が家に入ってくる。弁護士トーマスは、主人との関係を尋ねるが記録に何も載っていなかった。
弁護士トーマスから翌日に立ち退きを伝えられたチャンスは、古いバッグに自分の服などを詰めて、初めて家を出ることになったのだ。
スーツ姿に大きなバッグと傘を持ち、当てもなくワシントンの街を歩くチャンス。
街を歩く見知らぬ人に「すいませんが、お腹が空いていますのでランチを頂けませんか?」などと純粋に礼儀正しく尋ねるチャンスは、普通の人には理解ができないだろう。
チャンスは道端に集まっていた不良連中にも純粋に話しかけるが、脅されるのにも意味が分からずだった。
夜になって、商店街のテレビに見えた自分の映る姿に夢中になっていたチャンスは、バックしてきた高級車に腰を挟まれてしまった。
慌ててドライバーが対処し、持ち主の婦人イヴが病院へ連れていくとチャンスを車に招き入れるのだった。
車内でイヴはチャンスの紳士的な雰囲気を感じて、家にいる専属の医者へ診せることにしたのである。
チャンスが連れて行かれたところは、普通の富豪ではない経済界のトップである邸宅だったのだ。
門に入ってからも邸宅まで暫く続く通りがあるほどの広大な敷地は、まるで国立公園なみである。
出迎えの人たちも何人も使えていて、屋敷内には専属医師と医療室もある大豪邸だ。
この家の専属医師であるロバート医師が、チャンスの腰を診てから尋ねた。
「この件について、何か訴訟をしますか?」
しかしチャンスは、その意味を理解できずに答えるのだった。
「いいえ、訴訟なんて見たことがありませんので・・」
チャンスはレントゲン検査をするために医務室へ連れて行かれ、そこで初めてここの主人ベンジャミン・ランド氏に会うのだった。
ランド氏は米国経済界の要人であるが、血液の病気で治療中の状態であった。その婦人であるイヴは彼の容態を心から心配してくれる大切な家族なのだった。
ランド氏はチャンスを夕食に招いた後に彼と語る時間を作って、チャンスの裏表のない落ち着いた純粋な性格に感銘を受ける。
また、イヴもチャンスの存在を意識するようになり、次第に彼に惹かれていくのである。
翌朝、外へ出かけようとしているチャンスをロバート医師が呼び止めると、本日来る米国大統領に自分も一緒に会う約束だと伝えると、(なぜこのただの庭師にランド氏はこんなに信頼を寄せてるのか)ロバート医師に疑問を抱かせるのだった。
そして間もなく、多数の車両を引き連れた大統領専用車が敷地に入ってきた。
ランド氏に呼ばれたチャンスは、彼と肩を抱いて大統領の待つ書斎に歩いて入った。
「私の良き友人のチャンシーガーデナーだよ!」とランド氏が大統領にチャンスを紹介した。
そして、大統領が今の経済界の現状について助言が欲しいと尋ねると、ランド氏の意見に続き
「チャンシーガーデナー氏はどう思いますか?」と聞いてきた。
難しい事はさっぱり分からないチャンスは、庭の手入れの話をするのだった。
「冬は必ず春になり、春はやがて夏になり実がなるのです・・」という様な語りに
ランド氏も「その通り!今の経済も必ずよくなるはずで焦ることはないという意味だ!」
チャンスの語った単なる庭木の手入れ方法は、経済界の良きヒントに例えられていったのである!
「なるほど、こういう意見が議会には必要なんですよ!勉強になりました!」と大統領が言って会合は終わった。
大統領は部屋を出ると、シークレットサービスなどに命令する。
「すぐにチャンシーガーデナーという者を調べてくれ!どんな大物なのか・・」
ランド氏にすっかり気に入られたチャンスは、イヴにも同じく気に入られていた。広大な庭園にイヴに案内されると、そこには数え切れないほどの花たちがあった。
「貴方のことを大統領も褒めていたとベンが言っていたのよ・・」とイヴが伝え、そして以前のチャンスの主人のことやルイーズについて尋ねてきた。
「ルイーズは、メイドでいつも食事を持ってきてくれたんだよ」との言葉に、イヴはホッとしたのだった。
大統領の演説がテレビで放送され、チャンスの名前を出してその言葉を参考にした演説となった。
するとその放送後、チャンスに対して新聞社やTV界から取材の申し込み依頼が来るのだった。
やがてチャンスは全米で最も視聴率の良い番組に出演となり、その新鮮なユーモアさを称えられて一気に有名人となってしまった。
大統領の命令でチャンスの過去を調査するシークレットサービスだったが、彼については何も出てこなかった。
CIAやFBIに調査をさせても全く分からず、あれだけの大物ランド氏の友人であるチャンスについて不明なのは、誰もが不思議に思うのである。
しかしそれもそのはず、あの歳になるまで外に出たことのないチャンスには、当然に何も過去がなかったのだ。
ランド氏はチャンスを呼び出し、体調の悪いドクターストップという理由で外交官の招待パーティに代わりにイヴと一緒に出てくれないかと頼んできた。
意味も分からずに了解したチャンスにランド氏も喜んだが、それ以上に返事を聞いたイヴも嬉しそうだった。そしてイヴは部屋に帰る途中でチャンスに感情が弾けてキスをしてしまうのである。
ソ連大使との会話の場でもチャンスは純粋に振る舞い、何故か気に入られる存在となっていく。
気取らない紳士的な態度と多くを語らないチャンスの態度は、どこか深い学識のある大物として周囲に見られてしまうのだった。
そんなチャンスの不思議な魅力に、イヴもすっかり夢中になってしまった夜。息も短い事を悟っていたランド氏は自分の遺産として、様々な投資資産の整理をし始めていた。
「私はチャンシーガーデナーに会ってから、とても楽になったよ。彼には何か信じられるものがあるんだよ・・」と、ロバート医師に伝えた。
そして、ついにランド氏の最後が訪れた日。ランド氏は、チャンスを呼んで彼に頼むのだった。
「チャンシー、ここでイヴを面倒見てくれないか。彼女は君を慕っている」
「彼女はデリケートな花だから、みてやってくれ・・」
というと、ランド氏は静かに目を閉じるのであった。
ランド氏の葬儀にて
大統領の別れの挨拶の時、チャンスはその場を独り離れて近くの林へ歩いていく。
ランド氏の棺を6人の上層議員らが持って墓へ運びながら呟くのであった。
「次期大統領には、過去が不明で有名になったチャンシーガーデナーが良いのではないか・・」と。
チャンスは独り、池の水の上を普通に歩いていた・・
完・・
この作品のタイトルを翻訳すれば「ただそこにいるだけ(の人)」となっていますが、その意味はとても深く、究極の純粋さは運命の流れさえも味方になってしまうということに思えます。
主人公のチャンスは長い年月、何も外の影響を受けずに生きてきたため、幼い子供と同じ純粋さで人々に接することができました。
幼い子供のような純粋さは、大人になって消えてしまうものです。長い年月を生きていくと、人は純粋さや誠実さを失ってしまい、良からぬ考えも植え付けられていくのでしょう。
高度な知能も経験も今に生きる人間にとって必要なものなのですが、このチャンスの様に真の純粋さも大切なのではないかと考えさせられる物語だったと思います。
この物語と同じような感銘を受ける映画で「フォレスト・ガンプ」という作品もお勧めしたい一つになっていますので、そちらも是非どうぞ!
*今回の記も一部スクショを取入れています。