「また体の変化に気付いた。白髪はなくなり、髪はどんどん伸びてくる」
「匂いも耳も良くなり、歩くのも早く疲れも減っていった。」
みんなは老いていくのに、自分は若くなっていくのが不思議でたまらない。
ある日、またボタン工場の社長が訪ねてきて
「私は病気になってしまった。是非工場を見に来てくれ」と誘われた。
そして、ベンジャミンが息子であると告白した。
ベンジャミンは本当の母の写真を見て悩んだ。
「お迎えが来たら、諦め行くしかない・・」父の葬儀に想う。
ベンジャミンは、初めてニューヨークへデイジーの舞台を観に行った。
しかし突然のことにデイジーとの時間は取れなかった。
デイジーも若く当時は舞台に夢中で、世界中を回っていた。
しかし彼女もベンジャミンのことを忘れていたわけではなかった。
その頃、ベンジャミンも益々若くなっていった。
そんなある時、フランスから知らせが入る。
デイジーが事故にあったという。
「ほんの僅かな(数秒数分の違い)出来事によって、その後の運命が大きく変わっていくものである・・」
デイジーの事故は、僅かな違いだけで起こらなかったはず・・
しかし、それは誰もどうにもできなかった出来事(宿命)である。
* *
デイジーに振られたベンジャミンは、帰国後 若さを楽しんでいた。
1962年のある日 デイジーが再び戻ってきた。
ベンジャミンにとって待ちに待ったひと時が訪れた。
デイジーとの幸せな日々だった。
「貴方はどんどん若返って、皺が全然ないのね 私は皺が増えてくるのに」
2人が旅行から帰ると、クイニーママが亡くなっていた。
ベンジャミンは父の家を売却して、デイジーと新しい新居を構えた。
二人だけの幸せの生活が始まったが、彼女の失ったダンサーの活躍は忘れられず、
ダンス教室を開くことになった。
「赤ちゃんができたみたい」
ベンジャミンは、不安だった。自分と同じ様な子ができるかもしれないと
若くなっていく自分に父の役ができるかも不安だった。
そしてある日、ベンジャミンは父となった。
すくすくと健康に育ってくれる娘を見て、ベンジャミンは考えた。
子供になっていく自分の分も面倒をかけられないと。
そして全ての遺産を処分に回し、デイジーに残し出て行った。
ベンジャミンは再び旅へ出ていたが、娘に毎年手紙を出していた。
何年も経って、デイジーが再婚していた頃
突然に若い青年ベンジャミンが現れた。
娘は大きく成長していたが、ベンジャミンのことを知らない。
なぜ急に会いに来たのか自分でも分からなかった。
それきり 二度とベンジャミンとは会えなかった。
ベンジャミンの日記はここで終わっていた・・
* *
デイジーの夫が亡くなって暫くしたある日、一通の電話があった。
久しぶりの老人介護施設へ訪ねると、児童相談所の係員が独りの少年を廃屋で見つけたと
少年が持っていた日記から施設とデイジーのことを知ったらしい。
そこにはピアノをひいている少年になったベンジャミンがいたのだ。
しかし、若くなった彼はデイジーの記憶もなくなっていた。
その日からデイジーは施設に通うようになったが
ベンジャミンは、日に日に幼くなっていき記憶が次第に薄れていくのである。
老人でいえば、認知症なのだろう。
何年か経って、ベンジャミンは赤ん坊になっていた。
駅に新しく時計が設置されることになった2002年だった。
そして、その翌年のある日
デイジーに抱っこされたベンジャミンは、亡くなるその日
彼女を想い出したかの如くじっと見つめた後、眠る様に息を引き取った。
病院のベッドでデイジーは娘に言った。
「これで全て分かったでしょう」
ニューオーリンズに台風(ハリケーン)が近づいていた。
– 完 –
今まで歳をとらない主人公の物語は「ハイランダー」や「アデライン」などがありましたが、老いが逆になっていくという物語はこの作品しかないので、本当に興味深いものでした。
なんとも言えない人生の切なさと素晴らしさを、この1本のシナリオに敷き詰めている様にも感じますね~
また、ベンジャミンの若くなっていく姿を、見事にCG加工で作ってあったのには脱帽でしたね!
* * *
今回もご一緒に追想いただき、誠にありがとう御座いました。
(一部スクショを使用しております)